2013年9月6日金曜日

ESTメールマガジン投稿原稿をご覧いただけます

公開から遅くなりましたが、エコモ財団(正確には環境的に持続可能な交通(EST)普及推進委員会)が発行している「ESTメールマガジン」の84号(2013年7月25日発行)に、Qサポ世話人大井が寄稿した記事が掲載されております。
ESTメールマガジンは購読無料で、交通関係の全国の取り組み・情報やイベントなどがご覧いただけるほか、有識者や行政寄稿のコラムもご覧いただけます(概ね月1回発行)。
過去のマガジンもPDFでご覧いただけます。

84号の原稿は こちら からご覧ください。
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1.寄稿(1)「環境的に持続可能な交通を目指して」(第84 回)
●「公共交通の利用促進における『ハードル』とは
―『短期・部分』の最適化追求から『長期・全体』的な最適化への転換の必要性―」
             【大分大学経済学部経営システム学科 准教授 大井 尚司】
 九州では自家用車への依存度が高く、車を全く使わない生活というのはなかなか困難で
すが、それでも公共交通の存在は欠かせないものです。ただ、公共交通の利用促進のため
に行われようとしている様々な政策が、いろいろな「ハードル」の存在で実施に支障をきたして
いると思われる事象が見られるようになりました。
 筆者の住む大分では、JR 大分駅ビルの新築に合わせ、駅前広場を公共交通優先の配
置にするだけでなく、駅から中心部への導線に公共交通利用と徒歩での回遊ができるまち
づくりをめざして、中心部の大通りで大幅な車線減の提案がなされましたが、意見の対立で
実行が頓挫しています。また熊本では、公共交通利用の利便性を上げるために入れるはず
のIC カードが、地元でしか使えないカードになるとの話が出て、全国共通化という利用客の
利便性向上を達成できないことから、市の予算支出の問題に絡んで議論が起きています。
これらのことが起きる原因は、「全体・長期」での最適化を考えずに「短期・部分」的な「自
己利益最大化」に走っている主体という「ハードル」の存在だと思われます。大分の例であれ
ば、中心部の利便性は自家用車が使えてこそという「古い常識」に加え、まち全体の最適
化よりも自家用車利用で来る自店のお客様による利益を重んじるという「全体よりも部分の
利益最大化」しか考えていない主体であり、熊本の例では「短期的な損得」が先走って、全
国共通化(のシステム導入)では困る主体があるものと思われます。
 このような事象が身近で起こっていることは、大きな問題でもあり、大変疑問を覚えます。
企業であれ公共であれ、本当の意味での地域貢献、「まち」の活性化、環境負荷軽減を
考えているのであれば、公共交通や徒歩の利便性を上げる「おでかけ」環境づくりと、長期で
にぎわいや経済循環が生まれるようなまちづくりを考えるべきでしょう。そのためにも、関係する
主体は、短期的・部分的な最適化や損得を考えるのではなく、長期的・全体的な「まち」や
「おでかけ」づくりの最適化を考えるべきではないでしょうか。筆者らは2010 年から「地域と交
通をサポートするネットワーク in Kyushu(Qサポネット)」で、交通事業者・行政・コンサル・
学識など、交通や地域に関心のある主体が、それぞれの立場を超えて、このような問題を考
える活動を九州で続けています。興味のある方のご参加をお待ちしております。
http://qsuppo-net.blogspot.com